誠の華−ユウガオ−
私はもう戦わないって決めたんだから、すぐに頷けば良いのに何故出来ないのかわからなかった。
心のどこかでまだ戦いと望んでいるとでも言うのか。
「私…は……、もう…剣は握らないって…決めたから…………」
重い唇を何とか動かすがその続きが出てこない。
パクパクと開いては閉じてを繰り返しているとふっと気が抜けたような笑いが聞こえた。
「それで良いんだ。お前はもう傷付く必要はない」
歳さんの大きな手が優しく私の頭を撫でる。
嫌な予感がした。
瞳の奥は全てを諦めたような色を宿している。
「死ぬつもりなの?」
考えるよりも先に口をついた言葉に心臓がヒヤリとした。
「…んなわけねえだろ。まぁ、生きて帰る保証はないがな。だがそんなのは今に始まったことじゃないだろ」
嘘だ、この人はもう戻ってくるつもりはない。
「どこに…行くの?」
恐怖で声が震えた。
嫌だ、これ以上誰も死んでほしくないのに。
「北だ」
「駄目!行かないで!!もう勇さんはいないんだよ、歳さん!!勇さんがいなくなった今あなたに戦う理由なんてないでしょう?!歳さんは上様だとか朝廷だとかどうでも良いって言ってたじゃない!!」