誠の華−ユウガオ−
ポタポタと畳に滴が落ちる音がした。
私はそっと歳さんから手を離すと立ち上がり襖を開けて縁側を見た。
外は雨が降っていて空気をより一層滅入らせる。
「もうさ、私達の戦いはきっと終わったんだよ。新撰組が終わった時に。あの時に引き返せば良かったの。でもみんな前が見えてなくて幕府にいいように使われている事に気付かなかった。歳さん、もう終わろう。もう良いんだよ」
もう誰も傷付かなくて良い。
みんな十分過ぎるほど苦しんだ。
これから時代は移り変わる。
それを傍観していこう。
「…そうだな、戦う理由のない俺がもう戦う必要なんてなかったんだな」
諦めのついたような声に安堵している自分がいた。
これで良いんだよね。
歳さんをこれ以上戦わせるわけには行かない。
「なぁ雪、悪いんだが使いに行ってきてくれねえか?」
「いいよ、何を買ってきて欲しいの?」
「お前の好きなもの」
「はい?」
突然何を言い出すのかと振り返ると目元を少し赤くした歳さんが少し寂しげな笑みを浮かべている。
「お前には散々助けられたしな、好きなもの買ってうまいもん食って帰って来い」