誠の華−ユウガオ−




「新撰組はこれから大阪城へ撤退することに決まりました」


「そう、この傷を見たら近藤さんも総司も怒るんだろうな」


「いいえ、副長も永倉さんも原田さんも斎藤さんも怒りますよ。もちろん僕も怒ってます」


「何であんたが怒るのよ!」


「そんな傷を負ったのに無理して刀を握ったせいでさらに傷口が避け、挙げ句の果てに砂まみれ。これは新撰組専属の医師として許せません」



「なんで刀を握ったって………あぁ…」



真っ紅に染まった柄を見て察する。


流石新撰組一の諸士調役。


この人の観察力は侮れない。


「はいはい、すいませんでした」


「……雪さん、何かおかしくないですか」


急に立ち止まった山崎に遅れて足を止める。


確かに、遠くからは喧騒が聞こえてくると言うのにここだけ世界から切り離されたかのように静かだった。


「気味が悪い、早く行こう。変なのに巻き込まれないうちに」


「…そうで…っっ!!!危ないっっっっ!!!!!!!」


山崎が叫ぶと同時に辺りに響いた乾いた音。


私に飛びかかる山崎の腹を貫いた一発の銃弾。


全ての動きがゆっくりに見えた。


「山崎ぃーーーーーーーー!!!!」


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