サトラレル

***


結局、声を出すことはできないままだったけど、打撲や擦過傷以外に目立った外傷の無かった私は一週間も経たずに退院することになった。



真ちゃんは「まだ早いんじゃないか」なんて言って心配していたけど、医者じゃない私だってちょっとだけ傷口が痛むのと、声が出せない以外には日常生活で特に困る事は無いって思うのだから、早くベッドを空けて入院する必要のある人に使ってもらわないといけないはずだ。



まだ外に出る用事も無いし、仕事を探す気力も無い。幸い……というか幸いでも無いけど、結婚資金として貯めていた貯金があるので、暫くはそれを切り崩して生活していける。


退院後は実家に身を寄せる事と、外出する時は真ちゃんが絶対に付き添うという事の二点を約束すると、ようやく真ちゃんは納得してくれたようだった。



……だけど。


実は、もう一つだけ退院の時に真ちゃんと約束をした事があったんだ。



『心療内科に通うこと』



まさか真ちゃんから言い出したこの約束がきっかけとなって、私の人生が違った方向へと進んでしまうような……そんな出会いが待っていたなんて、この時の私は知るよしもなかった。



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