今宵は遣らずの雨

小夜里は奥歯を噛みしめた。

宮内少輔は、江戸へ出立する今生(こんじょう)の別れの前に、せめてもと、小夜里と夫婦(めおと)らしい暮らしをしてくれたのであろう。


小夜里は心を殺し、三つ指をついて平伏した。

「……宮内少輔さま、江戸への道中のご無事を心より祈念いたしまする」

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