今宵は遣らずの雨

「……なんだ、『亭主』に向かって、その他人のような物云いは」

宮内少輔は、まるで苦い薬湯でも飲まされたかのように、顔を(しか)めた。

「だから、名乗りとうなかったのだ」

尖った声でごちる。


「江戸へは家族共々、出立(しゅったつ)せねばならぬ」

……他郷にいる妻子が、追随されるのであろう。

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