今宵は遣らずの雨
「……鍋二郎さまには、関わりのないことでござりまする」
初音は顔を曇らせて俯いた。
「もう、二十二であろう」
兵部少輔とはちょうど十歳違った。おなごの二十二は立派な嫁き遅れだ。
「初音」
そう自分を呼ぶ声が、なにやら近いな、と思って顔を上げると、いつの間にか目の前に兵部少輔がいた。
「な…鍋二郎さま?」
兵部少輔は初音を抱き寄せて、すっぽりと自分の腕の中に入れた。
「な…なにをなされまするっ。お放しくだされっ」
初音は兵部少輔の腕の中でもがいた。
しかし、幼き頃より剣術で鍛えた身体はびくともしない。それどころか、抱きしめる腕の力がますます強くなる。