今宵は遣らずの雨

「……もう、我慢がならぬ。
あれほど情の通わぬ女を『奥』とは呼びとうない」

兵部少輔の声は震えていた。初音は顔を上げた。

「……頼む、初音……
おれの側室になって、屋敷に入ってくれ……
……おれの支えになってくれ……」

見上げた兵部少輔の瞳は揺れていた。

初音はその瞳を見つめ返す。

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