今宵は遣らずの雨

「もし、わたくしにお預けくだされたならば……」

芳栄の方が聞いていようがいまいが、初音は必死で云った。

「寿姫どのが必ずや、相応(ふさわ)しい御家へ縁づきなされますることを、お約束いたしまする」


……そのとき、声が聞こえてきた。

か細い()だった。

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