今宵は遣らずの雨

「……寿姫どのは、御前様のお子にてござりまする」

初音はきっぱりと告げた。

「わたくしが、寿姫どのをお預かりいたしまする」


もうそれ以上、芳栄の方はなにも云わなかった。


寿姫の本当(まこと)の父親がだれなのか。

芳栄の方が本当に好いた相手であったのか。


……そんなことは、どうでもよかった。

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