今宵は遣らずの雨

「初音、そなたもわらわ(・・・)のごとく新しき御前様の御後見をしてみるがよい。そして、その次の御前様の母御としても、この安芸広島新田(しんでん)藩に尽くせ」

どうやら、瑞仙院まで生まれてくる子が男であると信じ込んでいるようだ。

「たまさま……」

初音はふっ、と(かす)かに微笑んだ。
兵部少輔がこの世を去ってから、初めて見せた感情だった。

「そなたには、その腹の中のややこ(・・・)をこの世に産み出す、とてつもなき御役目があることを忘れるでないぞよ」

これからの生き手本が、ここにいた。

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