今宵は遣らずの雨

小夜里は目を開けた。

恐ろしさで小刻みに震えた自分の腕が、自分の腹をしっかりと包み込んでいた。

咄嗟(とっさ)に、腹を……腹の中の子を庇っていたのだ。

自分の身体(からだ)はやはり、母になるつもりなのだ、としみじみ思った。

そして、なんとしてもこの子と二人で生きていかねばならぬと……はっきりと心に決めた。

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