泡沫の夜

「食べていい?」


理央くんの、甘く誘うような視線にドキッとする。


「た、食べるなら、本物のお団子をどうぞ」


理央くんの右側に置かれた老舗の和菓子屋の紙袋の中は、お花見団子のはずだ。


「……だな。この桜色の柔らかいコレは、後でゆっくりといただくとするか」


理央くんの唇が弧を描き、長い指が私の唇をムニムニと摘む。

本当に食べられそうだ。


「理、理央くんっ」


いくら周りに誰もいないからって、昼間からそんな言葉を吐かないでほしい。


「冗談だって。ほら、羽奏も食べな」


差し出されたお団子を一串受け取って、口に運ぶ。

口に入れた途端、お団子の餡から桜餅の風味がした。


「この薄桃色の餡、桜餅の味がする」

「桜の花見に桜餅そのものもいいけど、こういうのも面白いかなって」

「うん、美味しい……」

「お団子でこうも満足されると、他の何をあげても今以上の幸せそうな顔、見れるか分かんないな」

「これ以上なんて、望みません。今が幸せだから」


もちろんお団子だけで幸せになってるわけではなくて、理央くんが隣にいてくれるからなんだけど。

分かってるのかな?理央くんは。



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