泡沫の夜
「ほんとにね、もう十分なの。理央くんとこうしてずっと一緒にいられることが、何よりも幸せ。これ以上を望んだらきっとバチが当たる」
「羽奏のこと、俺はもっとたくさん甘やかしたいんだけどな。とりあえずさ、今日は桜もまだ咲いてないし、本当にただの仕事のリサーチになったけど……絶対今日一緒に過ごしたかったんだよ、俺」
今日、と言われて何か特別な日だったかと首を傾げた。
「今日は、俺達がちゃんと付き合い始めてから1ヶ月目」
「えっ?」
言われてみれば、カナではなく羽奏として想いを伝え、本物の恋人同士になれたのは1ヶ月前のあの夜だった。
忘れていたわけではないけれど、1ヶ月目というこの日を特別視してなかった。
私にとっては理央くんと過ごせる一日はいつでも特別だもん。
でも、理央くんって、意外とマメな人なんだって少し驚いた。
「羽奏って、意外と淡白だよな。うちの課の奴なんて彼女に怒られてたよ。1ヶ月目の記念日を忘れるなって」
「淡白ではないと思うけど……。私にとっては1ヶ月目だろうと、1年目だろうと、それ以外の日だろうと、理央くんといられる日は全部貴重で幸せな日だもん」
私の言葉に少し驚いた顔をして、そして嬉しそうに笑う理央くん。