その音が消える前に、君へ。


頑張るご褒美があると人は頑張れる、それは本当だと思った。


いつもなら定時のギリギリまで終わらせなきゃいけない仕事があるというのに、それが今日は30分前に全部終わっていた。


閉館準備に入り、絢斗くんを呼びに行くと真剣にあの本を読み込んでいた。


確かにあの本は面白かった記憶がある。


邪魔にならないようにと少し遠くの席に座ろうとすると、絢斗くんが顔を上げて目があった。


パタンと本を閉じて立ち上がり、すぐさま私の元へとやって来る。



「お疲れ様」


「ありがとう。外で少し待っていてくれるかな」



そう言って少し首を傾げると、絢斗くんは嬉しそうに笑う。


本を元の場所へと一緒に戻し、図書館の外へ出て行く絢斗くんの後ろ姿を見つつ戸締りを開始した。


全ての業務が終わり、すぐ様私は更衣室へと駆け込んだ。


指定のエプロンを外し、ロッカーの鏡でおかしな所はないかを確認して、荷物をまとめて急ぎ足で外へと向かった。





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