その音が消える前に、君へ。
お待たせ、と図書館の入口の花壇に腰掛けていた絢斗くんに声を掛けるとすっと立ち上がり絢斗くんは私の元へと近づく。
「何処かでご飯にする?」
「それもいいけど、少しだけ外の空気吸いたいかな」
「じゃあ、約束した場所に行こう」
そう言って笑って歩き出す絢斗くんの後ろを、慌てて追いかける。
大人びたその姿に見惚れながらも、絢斗くんの隣を歩く。
少しだけ成長した私達だけど、心は学生時代の頃と何一つ変わっていない。
今までの長い時間があるから、話すことはたくさんあるというのにお互い話す口数は少ない。
でもそれが妙に落ち着いて、安心する。
関係が何一つ変わっていない、その答えがちゃんとある。
図書館からあの無人駅までは結構近い。
歩いて10分程度の場所に、私達の思い出の場所がある。
迷いなく歩く絢斗くんに、私はしっかりと着いて歩いた。