その音が消える前に、君へ。
当時は時間がなくて周りを見れなかったけど、人通りが少ない分自然が多くてキラキラした世界が広がっている。
太陽の光を反射させながら流れる川や、風に揺れる木々。
自然の中で遊ぶ子供達の楽しそうな笑い声。
当たり前の世界の中で、ここは何故か眩い光が絶え間なく輝いている。
ローファーで走ったこの道も、あのバス停も、全部が輝いてる。
そして見えてきた無人の駅は、今日も穏やかに人を招くように構えている。
「懐かしいね。ここまで紗雪走ってきたんでしょ?」
「うん。そう」
息を切らして、少し体が苦しくても君に会いたかったから。
懐かしいあの感覚が戻ってくるようで、少しソワソワする。
二人で並んで駅前の階段を上り、ICカードをタッチして改札口を抜けた。
横に広がるホームには、誰一人いない。
でもあの日と同じく、線路は真っ直ぐ伸び続けている。