その音が消える前に、君へ。
夕焼け空はゆっくりと夜空に溶けていくように、色を交えていく。
空を見上げれば、一番星が見守るように光を放っていた。
ふわりと通り抜けていく風と共に、桜の花びらが舞ってはその体を踊らせていた。
その花びらを掴もうと手を伸ばすけど、その前に絢斗くんが私の手を掴んだ。
横を見れば、愛おしそうに私を見つめている絢斗くんがいる。
あの日離れたくないと思って叫んだ気持ちが、届いたように今ちゃんと彼がここにいる。
少し長かったけど、でも私は待つと決めたからこの街で君を待ち続けた。
「紗雪に会いたくて、急いで紗雪の居場所探して来て本当に会えるなんて……なんか夢を見てるみたいだ」
「夢になんかしないで。今ちゃんと私と絢斗くんは一緒にいる、それが事実だよ」
そう言って向き直ろうと足を動かすけど、その前に絢斗くんが私の腕を引っ張ってあの日みたいに絢斗くんの胸にすっぽりと入り込んだ。
暖かい絢斗くんの体温に、徐々に上がっていく私の体温に絢斗くんが笑う。