その音が消える前に、君へ。
各々自分達の部屋へと戻り始め、私も部屋へと戻ろうとホールを出る。
渡り廊下の窓から入り込んでくる夜風に釣られ、夜空を見上げると、瞬く星たちが歓迎するかのように輝きを放っていた。
まだ始まって1日目だが、なぜかこの時から胸のざわめきに似た何かが私を刺激しているような気がしてならなかった。
すると、私の横をあの音が通り過ぎていく。
何も言わずに廊下を歩いていくその姿から私は視線を逸らした。
軋むその音はどこか寂しげで、でもどこか弾んでいるような複雑な音だった。
しばらくその音を聞きながら、夜空を見上げていると陽菜乃が私に手を振りながら呼ぶ声にようやく足を動かした。