その音が消える前に、君へ。
* * * * * *
「暑い……」
何度目の呟きだろうかと思い返そうとしてみても、暑さに茹だるだけで頭は回ることはない。
遠くからは楽しそうな笑い声が聞こえてくるが、その声に表情がムッとなる。
臨海学校だと言うのに、私はホテル近くのこじんまりとした図書館で図鑑や文献を漁っていた。
今日の夜から行う天体観測だが、未経験で尚且つ知識のない人達の集まりということで、どの星がどの方角にあるのかハッキリさせておく必要があるということで図書館へとやって来た。
しかしこの暑さだというのに、エアコンが故障中とあって図書館はサウナ状態だ。
手当り次第探して見つけた文献を引っ張り出して見てみるが、ちっとも頭に入ってこない。
分厚い図鑑を見れば視覚的情報が多いため、やる気が出るかと思うがこの暑さでは次の行動まで移すのが億劫だ。
机に突っ伏して全身の力を抜いて、今は暑さに慣れるしかないと言い聞かせた。