その音が消える前に、君へ。
ガタリと奥の方で音が聞こえた途端、突っ伏していた頭を素早く上げ文献へと目を落とした。
チラリと奥を見るが、こちらへ近づいてくるような気配は感じられない。
ほっとしつつも、気分転換を装して席を立ち奥へと向かった。
奥の席でじっくりと本と向き合う彼の姿は、やけに涼しそうに見えた。
羨ましいと思うが、そう見えるだけで彼も暑いのは一緒だろう。
本を捲る音だけがこの空間に響く。
そう、この空間には私と彼ーー榊くんしかいない。
他のメンバーは部活での活動やら委員会の仕事が日中わんさかあるらしく、帰宅部の私達二人がこの任務に没頭していた。
丁度いい暇つぶしな上に、読みたい本も見つかるかもしれないと思い承諾はしたが、エアコンが故障してるのは予想外だった。
そんな中でも榊くんは部屋に入った最初の時以外、文句を零していない。