その音が消える前に、君へ。
本を読むことには何ら抵抗はないが、この暑さの中で読み進めるのは流石に厳しいものがある。
適度に休まないと効率よく読み進めることは不可能に近い。
休もうと提案したいが、榊くんの集中力があまりにもすごくて声を掛けづらい。
そんな私の気持ちが顔に出ていたのか、榊くんが手にした本を棚に戻して私に向き直った。
「少し休憩しない?」
「う、うん」
ぎこちなく返答すると、伸びをしながら歩き出す榊くんを見送った。
流石に二人きりを2時間も耐えたんだから、少しくらい一人で寛ぎたい。
だが、今回はそんな私の感情はどうやら伝わらなかったらしい。
「どうした?さっ、行こう」
扉を開けて待つ榊くんの言われた通りに従うしかないと、渋々歩き始めた。