その音が消える前に、君へ。

* * * * *


あれだけ泣いたというのに、次の日というものは来る日も来る日もやってくる。


昨日の肝試しは、私と榊くんは途中でバラバラになり迷子になった、というので問題はあっさり片付けられた。


周りからの冷やかしや、からかいの声もなく小さな笑い話で済んだ。


それでも私の心に住み着いた鉛のようなものはなかなか消えてはくれなかった。


何事もなかったかのように振る舞う榊くんだけど、明らか堅く分厚い壁を作り上げてしまった。


もう彼とは、今までのただのクラスメイトで関係はそれまでだ。


いや、元々ただのクラスメイトだったのに錯覚が重なってしまっていただけかもしれない。


臨海学校も残りの日数は今日を含め2日。


とても研究結果を発表出来るような進み具合でもない。


そもそも研究のテーマを長期間行うようなテーマにしてしまったのが悪かったが、今更テーマを変えたところで結果は同じような気がして誰もそこについては発言してこなかった。


先生達もクオリティは求めていないようで何も言ってくることはない。




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