その音が消える前に、君へ。
「よし、今日の夜はオールでもして天体観測しようぜ!」
一人の男子の提案にみんな乗り気らしく、今夜は徹夜での天体観測となった。
日中は星が見えないため基本自由時間となり、また他のメンバー達は部活での集まり等があるらしく特に用事のない私はまたあの蒸し暑い図書館へと足を運んだ。
もわっとした重苦しい空気が、じっとりと私を包み込む。
流石に昨日と同様長居したら、本当に夏バテをしてしまうと身体が告げてくるので司書さんに1日だけ貸してもらえるように交渉し手続きをすませ、急ぐようにして図書館から出た。
日陰で風通しのいい場所を見つけると、そこに座り読書の時間を過ごした。
今日も、運動部は海岸で面白可笑しく何か行っているのか大きな笑い声が聞こえてくる中で、私はひたすら本のページを捲り、本の世界へと旅に出た。
本の世界に入ってしまえばもう、周りの音は聞こえてくることはない。
自分と主人公達が中心となって物語を進めていく。
本の終盤に差し掛かった時に、はっと元の世界に戻ってくればヒグラシが鳴き、日が傾いていた。
慌てて本に栞を挟み、その場から離れホテルへと急ぐ。