花に美少年
「そう。一週間前に捨て猫を拾って、それですごい愛情込めて面倒見たつもりだったんですけど、逃げられました」
「・・・ああ、それで町を彷徨っていたってことか」
なんだ、猫か・・・。
「失礼します」
ちょっと裏切られた気分で、カーテンを引いて診察室に入る。それから邪魔をしないように、後ろの棚で次の診察の準備を始める。
「まあ、猫は気分屋だから諦めた頃に帰ってくるかもしれないし、今は自分の身体を治すことが第一だ。私も猫を飼っているから気持ちはわかるよ。きっと君もその猫に、名前を付けたりしていたんだろ?」
カルテを閉じたドクターが、椅子から立つ音がする。
だから振り返り、カルテを受け取ろうとした時、手にしていた次のカルテが滑り落ちた。
だって、ありえない。
「めいちゃん」
はっきりと耳に届いた声に、顔を上げることが出来ない。
「安達さん、大丈夫?」
「あ、はい。失礼しました。手が滑って」
「これカルテね」
「わかりました」
カルテを受け取りながらも、心臓がバクバクと音を立てる。
「じゃあ、湊さんは受付で待っていてくださいね」