わたしの読者
本当に? 概要は知られてるって?
「きみは他の生徒と同じように、本なんかよりテレビやゲームが好きで、読むとしても流行りの漫画。そんな外面を持つ、女子高生だ。けれどその実、紙の本が大好きで、小説や図鑑、地図にさえ興味を示す、熱心な読書家だ。こんなに充実した施設なのに、利用者が少ないことを勿体なく感じているものの、自分の本好きを隠したいため、人気のないこの図書室に居心地の良さを感じ、存分に利用している」
違う? なんて、首を傾げている。
どうやら本気に、目の前のこの人は、もうすでにわたしの読者のようだ。
「その顔は肯定ととるよ」
「……」
こいつ。
「まあつまりさ、」
今まで、語り部のように淡々と話していたその読者だったが、真っ直ぐわたしに向けていた視線を床に落とし、歯切れ悪くそう切り出した。
「今流行りのギャップってやつに、俺もやられちゃったわけ」
流行には流されない質なんだけどなあ、なんてぼやいてる目の前の読者は、どうやらわたしという主人公に惹かれたことを話していて、しかも照れているらしい。
この人こんな顔するんだ。
クラスでは、大人しい存在、というのは聞こえのいい言い方で、つまりは地味で目立たなくて無口で愛想がなくて根暗でボッチで何を考えているのかわからないキモイ奴、ということだ。
で、いつも本を読んでいた。
そこが余計に、みんなにいじられる要因だったわけだが、わたしはちょっとだけ羨ましかった。
もちろんボッチもイジメも嫌だ。すっごく嫌だ。
けど、教室で堂々と本を読んでいられるのが、羨ましかった。
放課後、他の子たちを誤魔化して独りでこっそり図書室を利用している自分が、ちょっとだけみじめに感じてた。
クラスではみんなと一緒になって、悪ぶったりちょいキレてみたり、この人のこと馬鹿にしてるわたしだけど、そんなのやっているほうが馬鹿じゃんって本当は思っている。
本当は小説の主人公みたいにイジメられている子を颯爽と助けたい。いいとこ取りのライバルキャラみたいに主人公へ貸しを作りたい。弱くて無鉄砲で、それを自分でもわかってる、なのにボスに立ち向かっていく、いつもはヘタレだけどいざとなったら自分を顧みず必死になる、主人公みたいに、誰かを守りたい。
「きみは他の生徒と同じように、本なんかよりテレビやゲームが好きで、読むとしても流行りの漫画。そんな外面を持つ、女子高生だ。けれどその実、紙の本が大好きで、小説や図鑑、地図にさえ興味を示す、熱心な読書家だ。こんなに充実した施設なのに、利用者が少ないことを勿体なく感じているものの、自分の本好きを隠したいため、人気のないこの図書室に居心地の良さを感じ、存分に利用している」
違う? なんて、首を傾げている。
どうやら本気に、目の前のこの人は、もうすでにわたしの読者のようだ。
「その顔は肯定ととるよ」
「……」
こいつ。
「まあつまりさ、」
今まで、語り部のように淡々と話していたその読者だったが、真っ直ぐわたしに向けていた視線を床に落とし、歯切れ悪くそう切り出した。
「今流行りのギャップってやつに、俺もやられちゃったわけ」
流行には流されない質なんだけどなあ、なんてぼやいてる目の前の読者は、どうやらわたしという主人公に惹かれたことを話していて、しかも照れているらしい。
この人こんな顔するんだ。
クラスでは、大人しい存在、というのは聞こえのいい言い方で、つまりは地味で目立たなくて無口で愛想がなくて根暗でボッチで何を考えているのかわからないキモイ奴、ということだ。
で、いつも本を読んでいた。
そこが余計に、みんなにいじられる要因だったわけだが、わたしはちょっとだけ羨ましかった。
もちろんボッチもイジメも嫌だ。すっごく嫌だ。
けど、教室で堂々と本を読んでいられるのが、羨ましかった。
放課後、他の子たちを誤魔化して独りでこっそり図書室を利用している自分が、ちょっとだけみじめに感じてた。
クラスではみんなと一緒になって、悪ぶったりちょいキレてみたり、この人のこと馬鹿にしてるわたしだけど、そんなのやっているほうが馬鹿じゃんって本当は思っている。
本当は小説の主人公みたいにイジメられている子を颯爽と助けたい。いいとこ取りのライバルキャラみたいに主人公へ貸しを作りたい。弱くて無鉄砲で、それを自分でもわかってる、なのにボスに立ち向かっていく、いつもはヘタレだけどいざとなったら自分を顧みず必死になる、主人公みたいに、誰かを守りたい。