初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

     *****

「おつかれさま」
「おつかれです」

お互いにそう言ってグラスを合わせた。

今日はゆっくり話がしたいからと坂下くんが選んだのは創作料理のお店。
個室風になっていて、少し大人の雰囲気の人気のチェーン店。
私もたまに利用しているけど、坂下くんもだったのかと思う。

「月曜日から誘って悪かったかな?」

「あー、全然平気。今週で仕事終わりだし」

今週は実は大した仕事がなくて、うちの会社で忙しいのは営業ぐらいのものじゃないんだろうか。

「週末は忙しいだろうし、イベントの時に誘うわけにもいかないしね」

そう言って、坂下くんは一瞬寂しそうな顔をする。
それを見て胸の奥がチクリと痛む。
きっと坂下くんの痛みはこんなものじゃない。

「イベントって言っても、平日だから私は関係ないかな」

私も一人だって坂下くんに教えたかった。
寂しいのは坂下くんだけじゃないって。

「え、」

驚いて顔を上げる坂下くん。
そんなに驚くような事かな?

「先輩、仕事が忙しいから」

そう付け加えると、驚いていた顔がだんだんと険しくなっていく。
あぁ、私は言葉の選び方を間違ってしまったのかもしれない
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