初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「…………」

「……っつか、みんななんなんだよ、ほんとに」

迷惑だと言わんばかりに本当に嫌そうに言う相良さん。

ツキン――と胸の奥に痛みが走る。

彼女と勘違いされちょっと嬉しかったとか、そんな私の気持ちを見透かされたようでますます言葉が言えなくなる。

「ほんと、マジで勘弁して」

あぁもう決定的。私はその言葉を聞きながら下を向きクッと口をきつく結びそれに耐える。
きっと前の二人も驚いて何も言えなくなっちゃったんだと思う。部屋の中に微妙な空気が漂ったまま。

「それより、そっちはいつ式すんの?」

急に話をすり替えた相良さんに、話を蒸し返すことなく二人はそのまま答え始めた。

あぁそっか。結婚するんだよね、婚約者って言ってたもんね。ぼんやりとそんな事を考えつつ二人を見た。

三人の会話は私の耳に届いてはいるけど、すっと通り抜けて頭の中にはうまく入って来ない。だけどなんとかその会話についていけるように、なんとか自分を取り繕った。だってこの二人に気を使わせちゃいけない。せっかく戻ったこの空気を壊しちゃいけないから。そう思うけれど、気づけば目の前のグラスについ手が伸びて。

一時間も経つ頃には手元のワインを何杯か飲んでいた。
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