初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「……うん。私も思い違いしちゃいけないって否定してた」
「マジか」
「あーでもっ、ちょっとだけっ」
項垂れた相良さんにそれだけじゃないと伝えたくて慌てて言葉を繋げた。
「ん?」
「そうだったらいいなって……思ってた」
だって。一緒にいるのその先に結婚があったら素敵って。
「その先もなにも。それは当然そこに入ってんだって」
「そうなの?」
「そうなの」
そうなのか……。相良さんはニコニコと微笑んで、繋いでいる手をキュッと握る。
幸せとか、
嬉しいとか、
あぁ、そんな言葉だけじゃ足りない。
私って、ボキャブラリー貧困。
この気持ちを相良さんに伝えたいのに。でも、言葉で伝えられないのなら……
拘束されていた手を解いて、相良さんの首元に手を伸ばして勢いよく抱きついた。
「わっ、クルミちゃ…―」
そして耳元で囁く。
「……好き」
結局伝えられたのはそのひと言で。
「ほんと。クルミちゃんて、たまに大胆」
相良さんの首にしがみつくようにしていた私に高さを合わせるようにして腰に手を回す。そうされた事でさらに距離が近づいて。
「……だって」
「いいよ、言い訳一晩中聞いてあげる」
それは本当に言い訳になるのか、それとも?
甘い口付けにこのあとの長い夜を予感させられて。
「…一杯。聴いて」
そんな言葉をいつのまにか囁いていた。