この暴君、恋すると手に負えません


私の頭上にはいつの間にか、一緒に部屋の中の様子を伺う帝さんの姿があったのだ。


「み、帝さん?いつからいたんですか?」
「お前が覗き見し始めてすぐだが?夢中になって気づかなかったか?」
「……気配消さないでくださいよ、もう」


すると帝さんは私の唇に人差し指を押し当てた。


「静かにしろ、見てるのバレるだろ?」


――やっぱりこの人はずるい。
指が唇に触れただけでこんなに意識してしまう私がいるのに、この人は平然とし過ぎている。

自分一人がドキドキしているのが馬鹿らしくなり、私はむっとしながら中の様子を伺った。


「……円華、僕の気持ちはずっと変わってないからね?」
「……え?」
「いつか円華が僕に振り向いてくれるように頑張るから」
「光希様、私はその……っ」

頑張れ、桐生さん!!

なんて心の中で応援していると、不意に光希さんが扉の視線に気づき振り返る。
その様子を桐生さんが不思議そうに見つめている。


「……そろそろ食事に行こうか?円華が好きな和食の料亭予約してるんだ」
「え、あ、はい」
「円華、言いかけた話は二人きりになったらちゃんと聞かせてね?」
「はい、光希様」

そして二人が扉に近づくと私たちは壁を背に横並びした。
扉が開いた瞬間、帝さんと光希さんは互いに目を合わせて口角を緩めている。




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