この暴君、恋すると手に負えません


誉さんは満足げな笑みを浮かべて、デスクの引き出しから新たな書類を差し出した。

「……よし、ここにサインしろ」

隣で呆然としている帝さんが視界に入っていたが、私はただ目の前にある雇用契約の解約書に黙々とサインした。

横に添えられた朱肉をつけて親指で印を押すと、誉さんは立ち上がって私の肩にてをそえた。

「美作虹美、本日をもって朱鳳帝との雇用契約を解除する。いい選択をしたな、感謝するぞ。退職金はあとで受け取ってくれ」
「......退職金なんて結構です。荷物をあの家に送ってくれさえすれば、何も入りません」
「分かった。明日にでも業者に荷物を引き取りに来てもらおう。今日は最後に屋敷に泊まっていくか?もう二度とお前が来る事はないだろうからな」




ーーもう二度と、か……。



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