この暴君、恋すると手に負えません
人どころか車一台も見当たらず、助けを求めようにも私には連絡手段が何もなかった。私の携帯が入っている鞄も恐らく犯人の仕業か、どこにも見当たらず途方にくれていた。
おまけに暖房もない港の夜の倉庫は、凍りつくような寒さでこのまま大人しくしているわけにもいかない状況だった。
「……もしかして、光希さんが?いや、でも光希さんがそんな事するわけ……っ」
--その時、私の脳内にある人物の顔が過った。
自らは手を出さず、人を駒のように操って、ふざけたシナリオで全てを自分の思い通りにしようとする九尾狐のような男の顔を……。