この暴君、恋すると手に負えません



「帝様、美作虹美を弄ぶのはパーティーが終わってからにして頂けませんか?」


そう、其処に現れたのは相変わらず冷たい口調で物を言う桐生さんだった。


「そうだな。よし、行くぞ」
「はい」


暴君は私から手を離すと、そのまま何事もなかったかのように歩き出した。隣で立ち止まっている桐生さんは、ちらりと私を盗み見ながら呟く。


「......美作虹美、私が言ったことを忘れるなよ」
「……帝さんから片時も離れるなってやつですか?」
「そうだ。私は朱鳳家の執事として他にもやらねばいけない事がある。だから常に帝様の傍にいるお前が、帝様に何か遭った時に必ず守り通せ。分かったな?」


そんな重要な役目のように言われるとプレッシャーが半端ないからやめてほしい。
しかしあの殺人予告上の存在のおかげで、既に私は緊張からか嫌な汗を搔いていた。


「……努力はします」


私は自信なくそう答ると、慌てて暴君の後を小走りで追った。
その姿を意味深な笑みを浮かべて見つめている人物がいるなど知りもせずに――……。




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