この暴君、恋すると手に負えません
すると立派な白い鼻ひげを生やしたふくよかなお爺さんが歩み寄った。
その人の顔を見るなり暴君は凛とした表情を浮かべて会釈をしていた。
「帝くんかね?誉くんにはよく会うんだが、久し振りだな」
「あぁ、神楽坂会長。ご無沙汰しております」
「前にあった時はまだ君は学生だったのに、今は副社長だなんて時が経つのは早いなぁ」
「もう十年以上も経ちますからね。それより本日は、我が朱鳳家の開催する親睦パーティーにご参加頂き有難うございます。是非楽しんで行ってください」
――あの暴君が敬語を使ってる……!?
私はそれがあまりにも衝撃的で目を丸くしながらその様子を終始見つめていた。
そして名簿で色がついた名前の人物と一通り挨拶をすませた暴君は、特設ステージの裏へと足を運んでいた。その間も不審な人物がいないか、周りを意識してみていたが見当たらなかった。
やっぱりあれは悪戯だったのかな。
ーーその時だった。
会場の照明が突然消え、一瞬にして暗闇に包み込まれたのである。