この暴君、恋すると手に負えません
「......とりあえず応急処置にはなっただろ?」
唇が頰から離れ、不意に暴君と至近距離で目が合うと私は一瞬ドキっとして見惚れてしまう。そのまま動くに動けずにいると、眉間に深く皺を寄せた桐生さんが駆け寄ってきたのだ。
「帝様!?ご無事ですか!?」
「あぁ、問題ない。この通り、虹美が守ってくれたからな」
わざとらしく私の腰に絡めた腕にぎゅっと力を込めて抱き寄せながら、暴君は悪戯な笑みを浮かべた。
「ちょっ、離してください!!」
「何だ?照れてるのか?」
「違います!!」
「......帝様、戯れるのは後にして頂けませんか?」
私たちのやりとりに、桐生さんは呆れたように頭を抱えて呟いた。そして暴君から解放された私は乱れたスーツを整えながら立ち上がる。
そしてステージ上に落ちたスポットライトに視線を向けると、コードの先が鋭い刃物で切られたような痕跡があった。
その私の視線に気づいた桐生さんは、スポットライトの前に腰を屈めた。その様子を見た暴君は不思議そうに首を傾げながら立ち上がる。