この暴君、恋すると手に負えません
「皆様、長らくお待たせ致しました。只今より体験版のシュミレーションを開始致しますのでお手元のVRをかけてください」
そして皆が待っていましたと言わんばかりにVRを装着し始める頃、光希さんが私に話しかけてきたのだ。
「虹美さん、でしたよね?」
「あ、はい」
「……今日桐生さんはご一緒じゃないんですね?」
「いらっしゃってはいるんですが、今は席を外してて......」
「あぁ、そうなんですね!いつも誰より帝くんの傍にいたから、姿が見えないの気になっちゃって。あの帝くんの傍にずっと仕えていられる人なんて、なかなか出来ることじゃないし」
確かに私が初めて暴君を見た時から、いつも傍には桐生さんがいた。
あの暴君が"有能な執事"だと言い張るくらいだから、その厚い信頼を得るほど彼はきっと陰ながら支えてきたのだろう。
何でいつも私の事を睨みつけてたのか、理由がわかった気がした。
「......まぁ、あの性格ですからね」
私は苦笑しながらぽつりと呟くと、光希さんは可笑しそうに笑った。