Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 
 天気のことや庭の美しさ話題にしながら東棟へむかって歩いていると、今度は


   
    「お兄様!」


 
 という華やかな声に呼びとめられた。

 夏の空を映したようなシアン・ブルーのドレスを着た若い令嬢が、
 駆けるように庭のアベロの繁みをぬけてミュアの前までやってくると、
 淑やかに貴婦人の礼をする。


   
    「妹です」



 フォッテン侯爵がそう紹介すると、令嬢は ソフィーニア=フォッテン と名乗った。

 なるほど瞳の色が同じ。
 
 そこには明るい、なにも畏れることがない、といった輝きと無邪気さがある。
 そしてその無邪気さのまま、ソフィーニアは言った。


   
    「このまま三人で、お茶会をしましょうよ」



 ミュアがこのあとの予定はデリアに聞かねばわからないというと、
 ソフィーニアは後ろにひかえていたミュアの侍女に、
 まるで自分が主人のように言いつけた。


   
    「デリアに予定を変更するように伝えて。
     王妃様はこれから、フォッテン侯爵兄妹と中庭でお茶会です、とね」
 
< 59 / 192 >

この作品をシェア

pagetop