Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

   
    「議会で発言したのはブリュー伯爵だったけど、賛成した貴族の
     他にも彼らにつながるのが誰なのか、わかってきたよ」
    「やっぱり思った通りの人物だっただろ」
    「そう、その通り。
     ミュアリス王妃がしゃしゃり出てくれたおかげだ、慎重に行動して
     いた彼らがあわてた動きをみせたからね」
    「……」
    「まったくたいした王妃様だ。さすが、グレイ=デュア=アルメリオンを
     二度も平手打ちするだけはある」



 からかった口調でそう言えば、グレイは怒るか拗ねるかと思ったのに、
 相変わらず物憂げな表情で、国境をなす山をながめているだけなので、
 トラビスはなんだか拍子抜けがした。

 まあ、たしかにグレイが玉座に座る精神的負担はかなりのものだから、
 仕方ないー ー

 望まぬ運命に翻弄される友の近くにいる、それしか自分にできることはない。


   
    「なんだよ、らしくない顔をして」
    「……」
    「どうしてそんな顔をしてるんだ、言ってみろよ」



 女性にならいくらでも優しくできるが、腐れ縁のグレイ相手に……と、
 ぶっきらぼうに声をかけたトラビスに、グレイはちらりと視線をよこす。

 
 それでも、なにか言うようではなかったのに、急にグレイは目線をおとすと、
 もごもごと聞きとりにくい声でなにか言った。


   
    「え、なんだって?」
    「……王妃が、……、……、変だ」
    「は?」 




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