Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 あの日、トラビスが “ グレイは夫としてどうか ” とたずねたときの
 王妃の反応は可愛らしいものだった。

 最初は意味を取りかねたのか、きょとんとした顔をしていたが、
 すぐにうっすらと頬を染めた。

 努めて威厳をそこなわないよう、動揺が声にでないよう、と答えて
 いたけれど、ミュアがグレイを思い浮かべて頬を染めたのは間違いない。


 嫌いな相手だったら、絶対にあんな反応はしない。


   
    「そうだな、嫌われて当然だ。大体、初対面から嫌われている」



 とグレイは心の中のもやもやを吐きだしたせいか、気の抜けたような顔で、
 そう呟いている。

 トラビスは、心の中でにやりとした。

 そしてグレイに近づくと、バン!と背中を叩く。


   
    「そう決めつけるなよ、ホームシックになっているだけかもしれ
     ないし、それならそうで、どうにかできる」



 そう言って、親友の顔をのぞきこみ、トラビスはやさしく言った。


   
    「ここまで来たんだから、愛しい人に会ってきたらどうだ。
     しばらく会っていないだろ」
    「そうだな、王妃のことは、それほど気にしていたわけじゃないんだ。
     ただ、お前の言ったとおり国交に影響しかねないし、……
     兄との約束もある」
    「ああ、わかってるよ」



 トラビスはさもうるさい、というように顔の前で手を振ると、
 ぱちんと馬に鞭をいれグレイより先に丘をおりはじめた。


 そのあとにグレイが続く。


 今度は先行して丘を駆けくだりながら、トラビスはやれやれとひとりごちた。
 
  これはお節介が必要だな ー ー

  まったく、あの王女がアルメリオンにやってきてから、退屈する暇がない。

 新しい悪戯を思いついたイタズラ坊主といった顔で、トラビスは笑いを
 噛みころした。




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