Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 手に持った紙に時々顔をつっこみながら東庭から中庭まで歩き、
 それを二回ほどくりかえしてさすがに疲れをおぼえたミュアは、
 水草を浮かべた水盤の横のベンチに腰をおろした。

 ついてきていた侍女をさがらせ一人きりになると、ミュアはうーんと
 伸びをして盛大にはぁぁーと息を吐いた。

 ちらりと横においた紙を見てしぶしぶといった感じで手をのばし、
 人名が書き込まれた紙を顔の前にもってくる。


 それは今朝、デリアに渡されたものだ。


   
    「二週間後、バハムに駐屯していた国軍第二連隊の帰国を祝う
     祝賀会が王城にてもよおされます。
     グレイ陛下がお忙しいようですので、会の席順は王妃様が
     お決めください」



 それだけ言ってデリアは部屋をでていってしまったけれど、アルメリオン
 にきてまだ三ヶ月のミュアが、ひとりで決めれるわけがない。

 おまけに招待客のリストの中に、ソフィーニア=フォッテンの名前を見つけて
 ミュアはよけいに憂鬱になった。



  ” 彼と私の親密さは、今も続いていますの ”

 艶やかに笑いそう言った、ソフィーニア。

 緩やかなウェーブのある栗色の髪は豊かに波打ち、小さめな鼻と顎、
 でも、明るいブラウンの目は、まるで人形のように大きくきらめいていた。


 ミュアは自分が魅力的だと自覚しているが、彼女はミュアとはまた違った
 魅力にあふれた女の子だ。

 そしてそちらの魅力の方が、グレイの好みにはあっているらしい。



 なぜグレイがミュアをひとりベッドで寝させ、自分は長椅子で寝るのか……

 それは彼女を愛しているからだ。

 ミュアとの結婚が、ふたりの仲を引き裂いた。
 だけど、今もグレイは彼女を想いつづけているのだろう。

 そう考えれば、彼の態度は納得がいく。
 ミュアはターラントとの友好な関係のための必要な道具。


   
    「それでいいじゃない。」


 
 自分だって焦がれていたのは、ウォーレスだったもの。
 何度そう自分に言い聞かせても、心は軽くならない。




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