Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
なんとも居心地の悪い陽気さが、その場に広がりはじめたころ、
慌てふためくといった格好でひとりの兵士が走ってくると、
席にもどっていた連隊長に耳打ちをした。
「なんだと!?」
青ざめた顔で立ちあがった連隊長は兵士ととも出ていこうとしたが、
足早に近づいてきたグレイが腕をつかみそれを止める。
「なんだ? なにがあった?」
「それは ー ー」
「はっきり言え!!」
「オーガが……、逃げだしました……」
近くにいた婦人がその言葉に悲鳴をあげ、何事か?と人々が騒ぎはじめる。
「トラビス! この場のものを西門から外へ避難させろ!」
グレイの声が響き、トラビスが機敏に応え、続いてグレイは隊長の腕を
痛いほど握り、命じた。
「逃げだしたオーガにむかって絶対に槍や矢はつかうな!」
「いや、し、しかし」
「オーガは賢い。弓や槍で狩られたことをおぼえているあのオーガは
武器を手にしたものはすべて敵とみなして攻撃してくるぞ」
「で、では、どうすれば……」
「火だ。兵には松明を持たせろ、火で追いつめるんだ」
そう言いながら、グレイはもう走りだしている。
その背中にむかって、ミュアは呼びとめるように叫んでいた。
「陛下!」
ミュアの声に、グレイは顔半分だけふりかえり立ちどまりかけたが、
ふりきるように前をむくと駆け去っていった。