Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
 
 あのときは銀のオーガだった…… とグレイは思う。


 あのときも、緑の芝生の上を弾むように駆け、
 やっぱり今のように開けっぴろげに笑っていた。

 女のくせにと思ったし、自分のオーガが傷つき、腹がたったのも事実だ。

 でも、ミュアはグレイの中に強烈な印象を残した。

 温度を感じない、色のない世界に暮らしていたグレイ少年にとって、
 それは鮮やかに心動く出来事だったのだ。



 だから戴冠式の日に思わぬところで再会したとき、驚きとともに、
 淑女らしからぬミュアの振る舞いに懐かしさをおぼえた。

 でも、婚姻式でのとりすました表情には、腹がたった。

 もっとも、貴族との軋轢にイラついてもいたから、
 やつあたりに近かったのだが、また平手打ちされるとは
 思ってもみなかった。


 一緒に暮らせば、ミュアはやはりあのときのミュアで、
 ただ、 “ 王妃 “ とう容れ物に自分をあわせようとしているだけだった。

 そんな必要はないと言いたかったが、彼女は王妃となるべく定められた
 女性なのだから、仕方ない。


 でも、今はまるで……、王妃という名の血の通わない機械仕掛けの人形のようだ。


 でも、ここにいるミュアは違う。

 本当のミュアが、ここにはいる。




< 87 / 192 >

この作品をシェア

pagetop