Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「王妃をターラントに、里帰りさせようと思う」
「いけません、今のミュアリス様の状態をみれば、
ターラントの国王ははげしくアルメリオンを責められるで
しょう。
それこそ国交に悪影響を及ぼしかねません」
ミュアのためにと考えたグレイの提案は、貴族たちに一言で
はね退けられた。
貴族たちの目は、暗に “ これは陛下の責任だ ” と言っていた。
王妃ひとりうまく御せないとは、” なんと無能な王だ ”。
閑散とした議場にひとり残り、目を閉じ、深く頭をたれ、
グレイは身じろぎもせずに座っている。
いつもの男があらわれて、冷めた視線をグレイによこした。
「王妃様のことは大変痛ましいことだと、あの方も
案じていらっしゃいます。
ですがここで、国王としてなにかしようなどと、
思わない方がいいでしょう。
今、貴族たちを刺激するのは得策ではありません、
わかっていらっしゃいますね」
いうことだけ言って、男は人目をはばかるように議場から姿を消す。
「くそっ」
男が去ると、心の針が振り切れたというように、グレイは突然、
勢いよく腕を振り上げ、肘掛にこぶしを、ダン! と打ちつけた。
椅子に埋め込まれた金具のせいで皮膚が裂け、血が滴(したた)る。
「自分が無能呼ばわりされるのはかまわない。
何をするべきか、
何をしないでいるかもわかっている。
でも、このままでは……」
流れ出る血が、国王の椅子を赤く汚していった。