Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
どれくらい走っただろう。
グレイが駆けさせていた馬をどうどうといなし、ゆっくりと歩かせて
入ったのは丘の上にぽつんと建つ黒いスレート葺きの屋敷の敷地内だった。
貴族の屋敷ほど大きくはないが、庶民の家ほど小さくもない。
シンプルな作りの家は、ちょっとした商人が持つほどの家だろうか。
大きな楡(にれ)の木が門柱のように家の前に二本たち、台所らしき所からの
煙突には薄く煙があがっている。
正面の玄関扉のまえにミュアをおろし、グレイが楡の木に馬を繋いでいると、
いきなりバーン!と勢いよく、玄関の扉があいた。
腰に手をあてた太りじしの女がいて、あっけにとられた顔でミュアを
見ている。
ミュアもまた、あっけにとられた顔をした。
なぜなら女の肌は浅黒く、黒く縮れた髪も顔の真ん中に、でんとすわる
丸い鼻も、本でしか見たことがない南方の人間のものだったから。
「おや、まあ!」
と女は大声をだし、
「こんな朝っぱらからなんですか 、 ぼっちゃん!」
とアルメリアの言葉で、歩いてくるグレイに話しかけた。
ぼっちゃんと呼びかけられたグレイは、
「朝っぱらからすまないね、ヴェイニー」
と落ち着きはらって謝罪を口にすると、驚き固まっているミュアの肩に
手をまわし言葉を続けた。
「まあとにかく、温かく迎えいれてくれると、ありがたいんだけどな」