Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
まだ居間には火がはいっていないからと通された台所は暖かく、
使いこまれよく磨かれた鍋が壁にかかり、台の上はぴかぴかで、
籠にもられた玉ねぎと秋ラディッシュがふきんのはしからのぞいていた。
火が掻きたてられた厨房のストーブの上では、
寸銅鍋がことこと音をたて、良い匂いを台所中にひろげている。
すぐにその鍋からあつあつのスープが皿に盛られ、
ゆらゆらと湯気をたてて、ミュアの前に置かれた。
玉ねぎと蕪のシンプルなスープ。
どうしようかと助けを求めるように、少し離れたところに座った
グレイをミュアが見ると、グレイは目でスプーンをとれと促し、
ちらりと、ミュアのとなりで腰に手を当て仁王立ちしている
ヴェイニーを見た。
「無理にとは言わないけどね、なにか食べたほうが
いいって顔してるよ」
そう言って、ヴェイニーはこつこつと台の端を指でたたく。
その音に急かされた気になって、ミュアはスプーンをとりあげると、
ひと匙すくってすすった。
「おいしい」
思わず漏れた実感のこもった言葉に、にいっとヴェイニーが
満面の笑顔をひろげる。
本当に王城のどんな料理よりもおいしい気がした。
ゆっくりとだったが、ミュアは残さず最後まで食べてスプーンをおく。
ミュアが食べている間に三杯もスープをおかわりしたくせに、
先に食べ終えていたグレイが、ほっと安堵の息をもらしたが
ミュアは気づかなかった。