大切なものを選ぶこと
「蓮さんって頭良いし完璧超人なのに、ほんっとに弘の事しか考えてないですよね!厳しい事ばっかり先に言うから美紅ちゃん泣きそうじゃないですか!」
『もう!』と口を尖らせる楓さんに小さく蓮さんが肩を竦めた。
楓さんに言われて、自分が泣きそうな顔をしていることに気付いた。
同時に弘翔に抱き寄せられる。『ごめんな』と優しく言われて小さく首を横に振る。
「大変失礼致しました。一番大切なことを最初に言うべきでしたね」
「大切な事…?」
「えぇ。私が今日来たのも、美紅さんにこれを伝えるためです」
改めて、居住まいを正した蓮さん。
私も弘翔の腕から抜けて蓮さんと向かう。
「弘翔の人生にあなたが必要とあらば、その時は…何があっても私がこの命に代えて、あなたをお守り致します」
「ッッ、」
「私の大事な弟です。
どうか、よろしくお願いします」
深々と頭を下げられて、思わず私も反射で頭を下げた。
弘翔と蓮さんの間に何があったのかなんてわからないけれど、それでも蓮さんが秋庭の人みんなから好かれていて信頼されている理由がやっとわかった気がする。
真っ直ぐに私を見据えた瞳が弘翔に向けるそれと変わらないくらい優しくて、今度こそ本当に泣きそうになった。
そして、蓮さんがみんなから優しいと言われる所以もやっとわかった。
「大丈夫よ美紅ちゃん。さっき蓮さんが言ったのは極論だから。蓮さんは弘が大切にしている人に対しては激甘だからね」
「そーそー、私なんか、弘兄にも蓮さんにも小さいころから甘やかされまくったしね!」
「ちゃんと俺の口から言わなくてごめんな美紅。兄貴のことは直接会って知ってもらいたかったんだ」
「ううん、大丈夫。私も…ちゃんと蓮さんのこと知れてよかった。最初は死ぬほど怖い人なのかと思ったけど…」
やっと表情が崩れた。
蓮さんに認めてもらった嬉しさと安心感から、一気に肩の力が抜けた気がする。
──「で、なんで楓がここにいるんだよ…?」
ひと段落して、弘翔が楓さんに呆れたように問えば、何故かドヤ顔の楓さん。
「そんなの、聖ちゃんと喧嘩したからに決まってるでしょ」
「「またか」」
弘翔と葵ちゃんの至極呆れた声が重なった。
蓮さんはなぜか楽しそうに口角を上げている…。