大切なものを選ぶこと



「お、美紅ちゃん久しぶり~」




「夏樹さん!」



本部のテントへと行くと、久しぶりに聞く緩い声。



弘翔と付き合い始めた最初の頃はフラッシュバックや悪夢のせいで何度もお世話になった人。


怠そうな表情を浮かべてるし、かなり緩い人だけどとても頼りになる。




「なんでいるんですか?」





「ん~、浴衣美女でもナンパしようと思ってね」





「なんですかそれ」



相変わらず緩いし、パイプ椅子を3個並べて寝転がっているという訳のわからない様子。


この人ここで何してんの…??



私があまりにも訝し気に見ていたのが伝わったらしい。何故か楽しそうに笑われる。




「ここ本部は救護所も兼ねてるのよ。ここまで大規模な祭りなら一通りの応急処置ができる奴が必要でしょ」




「なるほど…」




ちゃんと仕事をしに来ているらしい。



寝転がっているのには目を瞑ろう。



こんな人だけど腕は超一流だし、仕事に対しては真面目なのは私もよく分かっている。




「兄貴は?」




「帰ったって聞いたよ~」




「帰った?この祭りの総責任者だろ」




「いやいや俺に聞かんでくれよ」




弘翔と夏樹さんがそんな会話をしていると、近くにいた組員さんが『蓮さんなら高巳さんに一任すると言って帰られました』と教えてくれた。



先ほどまで弘翔は高巳と一緒に事務所にいたらしく、まだ到着していないのも仕方ないと納得したみたい。




「よし、じゃあ食うか。夏樹、お前も暇なら消費するの付き合え」




「すっごい量だねコレ。ま、暇だし自主休憩にしましょうかね」




「夏樹さん、お茶とビールどっちがいいですか?」




「美紅ちゃん…俺、こんなんでも一応勤務中だよ…」




「あ、そうだった…」




あまりにも暇そうで何もしてなかったから忘れてた。



アルコールなんて入れちゃダメに決まっている。



横で弘翔は爆笑してるし、周りの組員さんたちも肩を震わせている。





「あ、このたこ焼き美味しい!イカ焼きも!」



笑っている人たちはほっといて組員さんたちからもらった食べ物を開封して食べ始める。



こういうところで食べる屋台の物って雰囲気と相まって3割増しくらいで美味しく感じる。



弘翔はといえば、お腹を満たすためというよりビールの肴として食べている。



イカ焼きは分かる。焼きそばも焼き鳥も分かる。だけど…ベビーカステラを肴にビール飲むって意味わからない…。




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