大切なものを選ぶこと
私が頷いたのを見て表情を崩した秋庭さん。
「高巳」
「はいはい。退院許可は取ってあるけど、肋骨折れてるらしいから無理させんなよ」
「純」
「へい、車の用意は整ってやす」
名前を呼ばれただけで意思疎通できている三人。
というか…この只ならぬオーラを纏った三人は一体…何の仕事をしてるんだろう…
秋庭さんも藍色の髪のイケメンさんも、スキンヘッドさんも…絶対に普通の人じゃない。
──「おい美紅!」
私が秋庭さんの言葉に頷いたのを見て、取り乱した悠太。
そのまま私に向かって拳を振り落とした…
だけど頬に痛みが走ることはなかった。
──パシッ
悠太の拳は私に届く前に秋庭さんの手のひらに収まった。
「いい加減にしろ」
「全部テメーのせいだ!!」
「………………」
「お前さえいなければ…お前さえ…!!」
「………………」
「なぁ美紅、美紅は俺のこと愛してくれてるよな?俺とコイツ、どっちを選ぶんだ?」
悠太は完全に我を失っている。
でも…これが最後かもしれない。
最後の最後まで悠太に言いたいことを一つも言えないのは嫌だ。
「悠太…もう終わりにしよう。もう悠太のことは好きじゃない」
「……美紅?」
私の言葉に絶望したような表情を浮かべた悠太。
その瞳は生気を失っていて、焦点も合っていない。