大切なものを選ぶこと
「お前さえいなければ…」
低く小さく呟いた悠太。
そのままベッドサイドに置いてあった果物用のナイフを握った。
「殺してやる…殺してやる…殺してやる…」
壊れた機械のように同じ言葉を繰り返して、真っ直ぐに秋庭さんを見る。
明らかに悠太の様子はおかしいのに、秋庭さんは余裕の表情を浮かべて一切抵抗しようとしていない。
「殺してやる!!!」
大声で叫んだ悠太は秋庭さんに向かってナイフを思いきり振り下ろした。
その瞬間、秋庭さんは自分の身はそのままに私を背中に庇ってくれた。
「秋庭さん!」
思わず叫んだ私に、‘大丈夫だ’と答えた秋庭さん。
秋庭さんの背中に隠れて見えなかったけど…
藍色の髪のイケメンさんが悠太の手首を捻り上げていた。
「ッ」
腕を捻り上げられてナイフを落とした悠太。
そのナイフを横に蹴ったイケメンさんはとても冷たい視線を悠太に向けた。
「おいおい、勘弁してくれよ。
うちの若頭に物騒なモノ向けてんじゃねえよ」
「……え…?」
「ここで大人しく手を引くか…死ぬか…選べ」
「でっ…でも…」
イケメンさんの冷たい言葉に悠太が青ざめた。
秋庭さんが…若頭…?
あまりにも聞き慣れない言葉に頭が混乱する中、秋庭さんが口を開いた。
「これ以上、俺に言いたいことがあるなら…秋庭組六代目若頭として相手をしてやる。だが…もう二度と表の世界で生きていけると思うなよ?」
「ッッ、」
「秋庭に喧嘩売ってんだ。
それくらいの覚悟はできてんだろうな」