大切なものを選ぶこと
──秋庭さんの台詞に完全に悠太は言葉を失った。
そんな悠太を一瞥した秋庭さんはそのまま、何故か私を横抱きにした。
そう…俗にいう‘お姫様抱っこ’だ。
「行くぞ」
「へい」「はいはい」
私を抱いたまま秋庭さんは病室を出た。
「あっあの…秋庭さん?降ろしてもらえますか…?」
「…?なんで?」
なんでって…この前も思ったけど、何この人…天然なの?人の話聞かないだけなの?
「恥ずかしいんで降ろしてください…!!」
「ん?大丈夫だ」
「いや、あの…ほんと降ろして…」
「え?いや、車まですぐだから、な」
うん。やっぱりこの人…話聞いてない。
こんなイケメンにお姫様抱っこされ、なおかつスキンヘッドの強面さんが前を歩いていればそりゃ注目を浴びる浴びる…
若い看護師や患者さんたちが頬を赤らめているのに気付いているのかいないのか…秋庭さんは顔色一つ変えてない。
ちなみに、後ろを歩いている藍色の髪のイケメンさんは鼻歌を歌いながら周りの女の子たちにウインク決めてるし…
完全にこの一帯だけ異様な雰囲気に包まれている。
──そして、同時に私の頭の中は秋庭組とか若頭とか、聞き慣れない言葉で埋め尽くされていた。